国内外のリースホールド
事例見学
レッチワース英国ハートフォード州レッチワース
田園調布にも影響を及ぼした
世界初の田園都市
1889年に英国で書かれた『明日への田園都市』の理論は、日本の田園調布など世界の都市計画に大きな影響を及ぼしました。その著者であるエベネザー・ハワードが1904年から開発を手掛け、世界で初めて分譲された田園都市がレッチワースです。
都市部の劣悪な住環境が社会問題化する中、理想の住宅地をつくる運動として「田園都市協会」が設立され、構想実現のために「第一田園都市株式会社」が発足、ロンドンから鉄道で30分以上かかる郊外に、計画人口33,000人の都市建設が着手されました。99年のリースホールドによって長期にわたり住環境は守られ、街の成長と共に地主の含み資産と地代収入は増えて、そのお金を街の維持管理や開発に再投資するという好循環が、100年間にわたって続けられたのです。
建物と自然が調和する豊かな
住宅地
「一本の木も切り倒さない」という考え方の元、丘陵の稜線に沿って都市の主軸が設定され、タウンセンターの広場を中心に放射線状道路とそれらを連絡する環状道路が計画されました。自然の地形を尊重しつつも、車社会を見据えた環状道路には、緑地帯として街路樹が植えられ、緑と住宅群が見事に調和する田園都市が実現しました。
東京の田園調布のいちょう並木は、レッチワースを視察した渋沢秀雄(新しい1万円札肖像の渋沢栄一の四男)が参考にして、東京の郊外に放射状の道路計画と街並み景観をつくったのです。
景観を守る土地・建物の所有の
分離
法人や地主が土地を所有し、基本的に100年間は土地の売買のないリースホールドでは、土地の値上がり益は土地を所有している地主や法人に帰属し、建物を所有している個人によって、周辺環境が悪化するということがありません。英国で「フリーホールド」と呼ばれる”土地も建物も個人が所有する”ケースでは、日本の田園調布がバブル経済から現在に至る間に起こった状況をみれば一目瞭然。土地の売買益が個人に帰属して地価が高騰、その結果社会的ルールを無視する成金や、相続税負担にあえぐ高齢の住民の不動産売却などで、街並み景観を守る建築協定等は有名無実化され、次第に美しい街の雰囲気は壊れつつあるのです。
100年後も魅力が続く英国の
リースホールド
日本のような50年間で更地に戻される一般定期借地権による住宅分譲や、土地・建物をセットで販売する戸建住宅は、目先の一時的に”個人が資産家”になるでしょう。しかし入居後20年もすれば購入時の資産価値は半減し、30年後には魅力のない住宅地になって、空き家の増加や敷地分割による狭小住宅に変わっていくのです。100年間も景観が維持され、現在でも活発な不動産取引がされる英国のレッチワースは、同じ島国の日本にとってお手本となる事例です。