国内外のリースホールド
事例見学

パークナードテラス
桜区大久保埼玉県桜区大久保建築年:2018年

パナソニックが手掛けた
リースホールド事業

埼玉大学のある文教地区で、先祖代々の土地を所有する大地主が行ったリースホールド事業。先代の相続税対策のため、すでにRC造の賃貸マンション経営をしていたものの、多くの不具合と施工者とのトラブルに疲れていた地主が、自ら建築費用を調達することなく、先代から引き継いだ土地を守り、子孫へ安全に残す方法として、英国の大地主に倣い、欧州で数百年の歴史と実績のあるリースホールドを採用した事例です。

土地活用を任せたのは、やはり創業から100年を迎え、日本を代表する企業、パナソニックエコソリューションズ社。まだ地価の高かった平成初期の時代、自社の高額な建物を販売するために、定期借地権月分譲を手掛ける大手ハウスメーカーはありましたが、郊外の地価が沈静化した今の時代、手間が掛かって土地と建物セットで販売するよりも1棟あたりの売上単価の低いリースホールドを手掛けるハウスメーカーはほとんどありません。しかし創業者で経営の神様、松下幸之助さんの『水道哲学』を実践する同社の幹部の方々は、私が提案したリースホールド事業に関心を示し、実際に事例をつくってみようということになりました。

敷地を細分化した戸建てでは
得られない環境

土地を販売する一般的な戸建住宅事業であれば、出来るだけ販売できる敷地を最大化するため、開発道路以外は販売用地として区画割をしていきます。少し郊外であれば各戸駐車スペース2台確保は必要なので、敷地形状は多少いびつになっても、開発道路に接して駐車場の確保をします。一戸建てなので、敷地境界を明確にし、お隣同士の建物の隙間を確保する必要もあります。建ぺい率60%という制限は、敷地面積の4割ほど駐車場や隣棟間隔(通路幅)、裏庭などに割かなければならないということです。

一方、連続して街並みを形成する複数の住宅の敷地全体を、一人の地主(または法人)が所有して50年以上の期間限定の土地の賃借権を提供するリースホールドでは、もっと自由に建物の配置計画や緑の空間をつくることが可能です。この事例では、真ん中に入居者が共有して利用できるコモンガーデン(中庭空間)を配置、それぞれの住まいも中庭から玄関にアクセスするような動線設計をしました。マンションのように駐車場は道路面に集約し、自宅前に車の進入はしないようにしたので、小さな子供や高齢者がいる家庭でも家の前は安全で、宅配業者さんなど住民以外の人は入ってこれないので、セキュリティ上も安心です。顔見知りの住民同士の目が届くから、器械による監視カメラやセキュリティシステムよりも防犯効果も高まっています。

共用庭(コモンガーデン)のある
空間設計

住宅の設計は、私が二十代の頃勤務していた商業施設の設計施工の会社で、後輩として入社してきた(株)インフレイトデザインの竹下学氏。数年間机を並べて仕事をしましたが、今では自由が丘に設計事務所を構え、私の紹介でこの事例の基本計画・基本設計に参画しました。コモンガーデンのデザインは、グランドマム(株)の山本結子氏。パナソニックの住宅子会社のパナソニックホームズが、こちらでは木造で建築しています。

リースホールドという手法を利用することで、敷地を購入する数分の1の前払地代・保証金の負担で、家族も安心して暮らせるこの環境を手に入れることが出来ます。個人個人の敷地で空白となっているスペース4割を、同じ敷地に住む近隣と共有することで、バーベキューなども出来るプライベートなコモンガーデンが利用でき、車社会になる前の近隣コミュニティが、家族の安全も守ってくれるのです。リースホールドだからこそ出来る共有空間と小さな経済的負担で得られる住環境です。

Webマスターの若本が、設計者の案内で2018年7月にパークナードテラス桜区大久保を視察しました。