賃貸アパート経営より
リースホールド

アパート投資時代の
終焉

土地を所有していると、それだけで固定資産税等の「税負担」が生じます。自宅用地以外に土地を所有する目的は、その場所で行う生産活動が”土地所有を維持する手間やコストよりも得られる収益のほうが大きい”ことが前提です。「生産活動」とは、農業による収穫のほか、建物を建てて商売することや駐車場等に貸すことも含め、何らかの糧を得ることです。お荷物になる土地は売却されていきました。

まずは”家族を養うため”の土地利用がベースとなり、昭和時代の多くは農業的利用でした。基本的に農業は、家族による労働が伴うか、面積が大きくなれば、農業機械を導入し人を雇うなど支出も大きくなります。しかも収穫は気候変動や鳥獣被害など、自然に左右されてきました。高度経済成長の時代になり、第二次産業、三次産業の就業者が増えると、農業は”先祖代々の土地を守る”ことが目的化し、9割以上の農家では農業収入だけで家族を養うのは厳しくなりました。多くの農家では”子供達には農業を継がせたくない”と、大学進学や都会での就職を勧め、農業人口の減少、高齢化が加速化していったのです。

日本の経済成長と人口の増加・都市への流入と核家族化により、住宅需要が爆発的に増加しました。都市近郊の田園地帯は、昔ながらのあぜ道のような道路に宅地開発が進み、道路や下水道などのインフラ整備が追い付かないほどの乱開発や交通渋滞が社会問題化しました。そこで英国の『都市農村計画法』に倣い、1968年に都市計画法が制定され、開発を抑制する郊外の農地を『市街化”調整”区域』に指定して、宅地化が進まないよう規制しました。一切の新築住宅は建てられない区域です。

その結果、都市部の地価は高騰し、土地神話とバブル経済を生み出して、新築を建てられる『市街化区域』の線引きも郊外へと広がっていきました。市街化区域に編入された農家の固定資産税や相続税は急上昇、先祖代々の土地を売ることに躊躇した地主は、農業以外の「生産活動」として、固定資産税が圧縮でき相続税対策にも有効な賃貸アパート経営が急速に普及したのが現在の郊外住宅地の姿です。家族の労働を伴わず、管理会社に任せておけば手間もかからず安定収入が得られました。

一方、そのまま農業を続けたい都市近郊農家は、農地を宅地並みに課税されるととても税負担に耐えられません。そこで自治体が主導して宅地化できる土地と、そのまま農業を続ける土地に仕分けして、30年間農業を続けると約束した農地のみ、宅地並みの課税を回避して緑地(田畑)を残すことが出来たのです。それが、バブル経済が沈静化した1991年に改正された『生産緑地法』です。

30年間の営農を約束した農家も、30年後には代替わりして周辺の環境も変わりました。生産緑地を選んだ農家も親は高齢化し、農地として優遇税制を得られていた期限が終了して、そのままでは宅地並みの課税に変わります。それが2022年問題とも呼ばれる『生産緑地』更新の課題です。さらにもう30年も農業を続けるという約束が出来そうになければ、宅地利用に踏み切り、より収益性の高い土地利用か売却を迫られるのです。

この30年間の前半、2005年くらいまでは車の普及率も高くなり、住宅の郊外へのスプロール化も進んで、渋滞緩和のためにバイパスや自動車専用道、高規格道路など、立ち退きを伴う区画整理事業や都市計画道路が施行されて行きました。バブル崩壊による地価の沈静化により用地取得が容易になって、アメリカによる日米構造協議での公共投資増や郊外の大型商業施設の出店規制緩和などによって、ロードサイドを中心に大型店舗や賃貸住宅建設、新住民向けの宅地開発などが進んだのです。その後地価も次第に上昇し、戸建て住宅から分譲マンションへと、昔ながらの田園や緑地は消えていき、街の姿や都市景観も変わっていきました。

主要なロードサイドから数本の通りを入った住宅地は、道路幅員の狭さや都市計画法の「用途地域」の建物制限、容積率の上限などから、大型商業施設や分譲マンションは建てられず、広い農地を所有していた人々は売ることも貸すことも出来ませんでした。その結果、アパート建築メーカーや建売分譲業者の営業攻勢を受け続け、相続のたびに兄弟や親戚に所有が分割されて、望んでもいない土地利用・売却が増えました。静かな住宅地だった実家周辺は景色も変わり、見ず知らずの人たちが自治会や町内会にも入らず、地元民と距離を置くアパート住民が増えるという結果になってしまったのです。

2010年代以降は、人口減少と共に都心回帰が顕著となり、利便性の劣る郊外の賃貸住宅市場は、戸建てやマンションを購入するまでの一時的な住まいとなって、空室が目立つようになりました。その後、2015年の相続税の基礎控除引き下げが呼び水となり、税理士や地元金融機関を巻き込んで、相続税対策のアパート経営セミナーが開催されて、不動産知識のない地主が、相続税支払いへの恐怖感と営業攻勢から、周辺の空き家の実態に関係なく、アパート建築に走ったのです。

不動産経営の経験が乏しい地主には、経営リスク低減のための『サブリース』という一括借り上げの仕組みを利用することで、割高な建築費のアパート投資に誘導されてしまいました。レオパレス事件やスルガ銀行による不正融資や手抜き工事が社会問題になりましたが、冷静に考えれば今の時代にアパート経営にうまみがないことは、徐々に明らかになっています。需要に基づかない賃貸住宅の経営は、建物が新しい築後10年間は満室経営が出来ても、それ以降に修繕費用や退去で経営が厳しくなってくるのです。サブリース契約は、誰がやっても安定経営できる期間のみ、企業側が「満室保証」する仕組みなのです。

このような時代背景や住宅の需給関係から、アパート経営に変わる有望な土地活用の方法として登場してきたのが、私たちがお勧めする個人住宅向けのリースホールド事業です。建物の建築費を土地所有者が負わず、商業のように景気や時代の変化に影響されることなく、安定的に需要が続く個人向けの”土地の利用権利のみ提供する”リースホールドの仕組みです。少額でも、長期契約の「サブスクリプション」がビジネスの稼ぎ方を変えたように、20年後の入金額が予定できるビジネスは、アパート経営では得られません。

賃貸アパート経営よりリースホールドのメリット・デメリットの比較

メリット
長期に亘って安定経営

アパート建築の目的の多くが『節税対策』もしくは『相続税対策』です。株式投資と同様に”出口戦略”を持ち、不動産相場と修繕コストの上昇タイミングなどを見計らってキャピタルゲインを得ることが目的であれば、比較的利回りの高い投資となるでしょう。それは経営者としての持ち株(=安定株主)ではない、利殖としての投資家の株売買と同じく、資産運用先の一つとして不動産投資をするケースです。

アパート経営に限らず、不動産賃貸の事業は、基本的に借り手がずっと契約し続けてくれることで安定経営が可能です。不動産の所有は、それだけで維持コストが掛かるため、空き部屋や未契約など賃料が発生しない状態は、所有者にとって経営リスクです。先代から相続した土地で、取得コストが掛かっていないとしても、土地を担保にした借り入れで、賃貸経営をするリスクは今後大きくなるばかりです。

なぜなら賃貸アパートの入居者は、いつでも飛び立つことが出来る野鳥を鳥かごで飼っているようなもの。餌や水をあげても、自分の意志で飛び立っていきます。一方リースホールドの場合は、家族同様に一緒に暮らせるペットのようなもの。その環境が気に入り、地主とのいい人間関係が築けると確信した人だけが、数千万円の建物を購入し、家族で移り住んできます。自分が投資した建物を捨てて出ていく人はまずいません。つまり、長期に亘って安定経営が可能なのです。リスクなく資産家の地位を代々継承できます。

デメリット
少ないリターン アパート経営10%程度VSリースホールド2%程度

アパート経営は、いわば”不労所得”とも言われ、他人の家族に家主の生活を賄ってもらうといっても過言ではありません。農業のように、長時間の重労働を提供しても、天候不順や野生動物による作物被害で収入が不安定になることもなく、農業以上の収益を安定的に大きなリターンをもたらす投資です。土地所有者にとっては知恵も努力も役務も提供せずに暮らしが維持でき、短期的にはリスクも低い高利回りの投資でした。

一方、建物を建てるという投資をすることなく土地のみを貸すリースホールドは、土地を担保にした大きな借金をせず、土地に大きな付加価値を投じないためリターンは少なく、目先の相続税対策としては効果が薄い土地利用です。土地の評価額から得られる地代は、せいぜい年間2%程度なので、生活費をカバーできるほどの収入は見込めず、先祖代々の土地を手放さずに済む程度の収入しか得られません。

アパート経営で得られる10%近い投資利回りや、昔の定期預金の金利で考えると、そんな低い利回りで先祖代々の土地を赤の他人に貸してしまうことに、最初は納得できない人が多いでしょう。しかしバブル崩壊後の低金利で、もはや定期預金の金利はゼロに近く、株価は日銀や将来の年金財源で買い支えている”投機”といってもいい資産運用です。さらに日本の上場企業でもあれだけの経費と手間を掛け、1年間営業活動をして、得られる「営業利益率」は5%程度で、赤字さえ避けられないのがパンデミック以降の経営に対するリターンです。

今や土地の所有は、創業家が所有する持ち株と同様、株価の上昇や下落を気にすることなく、安定して配当を得る資産と考えましょう。「金のなる木」である土地を手放さすことなく労働も提供せず、あなたはそれ以上のリターンを求めますか?