国内外のリースホールド
事例見学
荻浦ガーデンサバーブ福岡県糸島市荻浦
物件のロケーションと開発企業
福岡市の中心地、天神の地下鉄に乗り九州大学が移転した西方面に向かうと、九州大学伊都キャンパスのある「九大学研都市駅」を通り過ぎ、美咲が丘駅の手前の線路沿いに、白い外壁のタウンハウスが目に飛び込んできます。移住者が増える福岡県糸島市に、2012年に出来た99年間のリースホールドで分譲された住宅地『荻浦ガーデンサバーブ』です。
この住宅地を開発したのは、宅地開発や住宅販売を目的とするデベロッパーではなく、土木の測量や区画整理等による立ち退きの建物補償業務などを行っている「建設コンサルタント」の会社です。将来的な公共事業の縮小に備え、新規事業への進出を目論んで海外を視察していた二代目社長が、欧米の美しい住宅地を目にして、自社が行うべき使命は「街づくりだ!」と新たな事業意欲に目覚めたのです。
英国の視察で学んだ開発思想
海外の様々な住宅地を視察する中で、特に英国のレッチワースやハムステッド・ガーデンサバーブが、分譲から100年以上経っても落ち着いた景観が維持され、資産価値が上昇しているという事実に驚き、その理由を探っていくと、99年間のリースホールドによる住宅地経営が最大の理由だと分かりました。建築の意匠など「ハードのガイドライン」と住民の自治を守る「ソフトのルール」によって、地主と建物所有者の双方が、同じベクトルで地域全体の資産価値向上に努力する好循環が生まれていたのです。
立地条件にあわせた開発計画
英国のような大規模開発ではなく「隣3軒両隣」という最小単位で、統一感のある町並みと住民コミュニティが維持できる住宅地として、線路脇に耕作放棄地となっていた約820坪の土地を自ら購入し、理想とする住宅地計画を立てました。土木設計のノウハウから、土地の形状や地盤の地質を判断して、出来るだけ土砂の運搬に余計な費用を使わず、軟弱地盤の改良も最小限にするための工夫がJR筑肥線の線路側から少しだけ見ることが出来ます。
それは、宅地造成でよく目にする「コンクリート擁壁」をつくらず、英国で「アタッチドハウス」と呼ばれる連棟の建物の地下空間を、まるで貨物船のようにコンクリート地下を連続させることで土壌や地形の弱点を強みに変えたのです。浮力を利用した『アルキメデスの原理』で、液状化に強く2016年の熊本地震時に生じた震度5の揺れにも、過半数の住民が気づかないほど強固な地盤になったのです。
建設コンサルならではの独自設計
3棟に分かれた基盤となるコンクリートの地下の上に、18戸のテラスハウスが載り、真ん中に配置されたコモンガーデンには、入居者がバーベキューを愉しむなど、住民同士の緩やかなつながりが、子どもたちにとっても安全で暮らしやすい住宅地となっています。コモンガーデンの地下空間には九州大学と共同開発した『ためとっと』と呼ばれる地下水の貯水槽も設けて、災害時や渇水時に飲料以外の水として利用できるだけでなく、夏の暑さを抑える効果も発揮しています。