「事業用借地契約」
終了後の土地活用

急速な社会変化と土地利用

車社会が進み、郊外の幹線道路沿いに食品スーパーやホームセンター、家電量販店やパチンコ店、ファミレスなど、いわゆる『ロードサイド型店舗』が数多く出来ました。その多くは、借地を借りて店舗を建てたもので、20年間の事業用定期借地契約で結ばれているものが多くあります。

以前は、複数の個人に貸すよりも、チェーン店を経営するような法人に貸すほうが、長期的に安定的な収益が得られ、需要も多かったので良い条件で借りてくれていました。しかし大型店の出店を規制していた『大店法』が米国の圧力で廃止され、代わりに『大規模小売店舗立地法』が施行されると、状況が一変します。より郊外に超大型の商業施設、ショッピングセンターやアウトレットモールが次々と出店するようになり、都市の中心部や近郊では、中規模のお店が郊外の大型店にお客を奪われるようになりました。この状況で、20年間の借地契約の終了が近づくと、それまで安心していた法人との契約が、地主にとって急にリスクに変わっていくのです。

人口が拡大し、業績が右肩上がりの時代には、法人契約は支払いにも不安のない安心・安定した契約先でした。複数の個人を相手に、賃料交渉や更新手続き、支払督促などをする手間やリスクは、法人契約にはほぼ存在しない時代が続いたのです。しかし人口減少やオーバーストアの時代に突入し、さらにネット通販などの台頭により、商売自体が厳しくなってくると、”大きな固定費”つまり土地や建物の賃貸借の費用を商売人が見直さないはずはありません。広い敷地を1つの法人に貸している不動産所有者ほど、契約更新をせずに退去すると迫る強気の交渉に対し、弱い立場にならざるを得ないのです。

これは、小売流通業の店舗用の土地に限らず、企業の物流倉庫や、病院・娯楽施設などの来訪者向け・従業員向けに広い駐車場を貸している地主も同じです。これからの20年間、自動車の所有形態や移動手段も変わり、自動運転も普及してくれば、広い駐車場も不要になってきます。すでに一部をコインパーキングやカーシェアリングの駐車場として「暫定利用」している土地も増えてきています。私はこのような土地利用を”都市の耕作放棄地”と呼んでいますが、その地域にとって「雇用も生まない」「子育て世帯も増えない」「税収も増えず」「相続のリスクも低減しない」所有の意味のない土地に、固定資産税を支払い続けている個人・法人に、より地域社会の役にも立つ課題解決案が必要ではないでしょうか?

その選択肢として、リースホールドによる戸建住宅用地への転換が、土地所有者のみならず地域社会にとっても有益な土地活用方法です。土地も建物も、自分のものではない賃借人(アパート住人)は、いつでも別の場所に移転でき、建物の維持・管理やその地域の風景、街の暮らしやすさや資産価値向上に関心はありません。しかし、建物を所有し住宅ローンの返済をしているリースホールドの入居者は、容易にその土地から逃げるわけにはいかず、長期に亘って最も安定的に地代を負担し続けてくれる最良の顧客です。

複数の方に借りてもらうことでリスクの分散にも繋がり、魅力ある住宅地を維持することで、中古住宅としての市場性も高まって新たな入居者も容易に募集することが可能です。それはすでに英国で100年以上実績がある土地活用方法なのです。

事業用定期借地と
リースホールドの比較

安心感 満了時のリスク 節税効果薄

従来型土地活用
(事業用借地)

従来の法人貸しの土地利用は、広い土地を一括で借りてもらえて滞納リスクは低く、長期の契約が一般的でした。期間満了でトラブルなく返還される安心感が法人契約のメリットです。財務諸表で経営状態も把握でき、取引銀行で相手の会社も調べることが可能なので、貸すことに不安はありませんでした。

しかし一方で、固定資産税都市計画税「小規模宅地」のような減税措置はなく、相続税評価もそれほど圧縮できません。建物を自ら建築し「建貸」している場合は、貸家建付地としての評価減や建物償却費を計上できますが、契約が満了して次のテナントが決まらなければ、リスクが一気に顕在化します。

特に、新型コロナのパンデミックを経験し、インバウンドも期待できない都市圏近郊で広い土地を所有している地主は、もはや5年後存続している確信のない法人との契約は、節税効果もなくリスクでしかありません。しかも多くの企業で固定費を下げるのに躍起となり交渉余地が大きいのが土地の賃借料です。

VS
長期に亘って安定的 節税効果大

新方式の土地活用
(リースホールド)

一体の敷地に、6戸以上の複数の個人住宅用地を50年以上の有期限で貸す英国式リースホールドは、数千万円のローンを組める個人が入居するので、返済能力は金融機関が審査し、さらにリスクも戸数分に分散されます。1つの銘柄だけの株式投資とポートフォリオで分散投資するケースを想定すると、どちらが安定した安全な運用が可能かは明らかです。

商売が前提の法人1社と、支払い能力のある複数の個人での地代交渉は、どちらが優位で長期に亘って安定的に土地から収益が出るのか、賢い人であれば理解できるでしょう。固定資産税や都市計画税も小規模宅地の特例で1/6,1/3にそれぞれ圧縮され、相続税も大きく圧縮されます。

英国の100年前の建物が適切に維持管理出来ている風景が、住民にとって誇らしく感じるように、地域の気候風土にあった100年後も残したくなるような美しい街並みは、大正時代の洋館の家と同様、価値ある土地利用ではないでしょうか?